Tシャツの概念を進化させた「シキサイ」

■Tシャツの概念を進化させた「シキサイ」の今・昔・未来

今回のクラゲコラムは「シキサイ」さんをご紹介。

スタート当初から注目し続けてきたシキサイさん。Tシャツをはじめて見た瞬間から衝撃を受けたクラゲが、どういう点に注目し続けてきたかを、過去を振り返りながらご紹介します。

また、各種インタビューよりシキサイさんが考えるTシャツ論・プロダクト論を読み解き、「Tシャツの概念を進化させたシキサイ」について考えてみました。

そして、現在の活動内容も要注目ですよ。

■2005年限定でスタートした「シキサイ」

シキサイは、プロダクトデザイナーの能登さんと藤本さんの夫婦デュオが運営するTシャツブランド。2005年5月1日新宿でスタートし、当初2005年夏限定プロジェクトという実験的な試みではじまりました。

シキサイのTシャツには一目で分かる特徴があります。

それは全てが「白Tシャツに黒インク」のTシャツという点。販売中のTシャツを見てみると、一目瞭然です。

 シキサイTシャツ一覧
 http://shop.notofusai.com/shikisai

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どうしてこのような手法をとるようになったか、東京Tシャツ部インタビューで述べてます。

シキサイ能登 :色に関しては、表現したいことが、最も根源的な色である白と黒だけで表現できてしまうので、特に色が必要なかったと言う感じです。

あれこれ色のバリエーションをつけたところで、我々のTシャツの価値が上がるとは思えなかったですし、むしろ白と黒だけに限定した方が、はっきりとやりたいことだけが伝わると思ったから、です。
Tシャツブランドインタビュー「シキサイ編」より

■白黒2色なのに「シキサイ(色彩)」な意味

やりたいことをはっきりと伝えたいため、白と黒だけで表現としたそうですが、ここに疑問が生まれませんか。「白と黒」の2色しか使わないのに、ブランド名が「シキサイ(色彩)」なのはどうしてか?

これはブランド名の由来が「白の色、黒の彩」なのです。「白Tシャツと黒インク」の「色・彩」で「シキサイ」、なので白黒2色カラーでの色彩なのです。

このように、ブランド名に遊び心がこめられているシキサイは、Tシャツにも遊び心が込められています。

■Tシャツで躍動感を表現するには?

シキサイのTシャツには、それぞれのモチーフに応じ一目で分かる「縫製」というギミックが加えられてます。

三輪車」であれば、ハンドルのリボンが実際にリボンに。

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ズック」であれば、靴ひもが実際のひもに。

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掃除機」であれば、Tシャツの裾が実際に引っ張られてます。

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ブラインド」であれば、垂れている紐を引っ張ると裾が引きあがります。

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三輪車」や「ズック」のようにモチーフの一部を立体的に拡張したTシャツから、「掃除機」や「ブラインド」のようにモチーフに応じた躍動感を演出するためのギミックまで、全ての作品に様々な縫製が加えられているのです。

シキサイのTシャツを見るときは、「このモチーフなら、どういうギミックが加えられたのだろう?」と推測するワクワク感があります。

「掃除機」は、Tシャツ上のデザインである掃除機が、実際の布を吸い込んでいて、この発想力に、「これはすごい!」と感激しました。

Tシャツを立体的に捉えただけでも十分凄いのに、躍動感まで表現した、更に上をゆく発想力を実際のプロダクトに落とし込んだのが凄さの真髄です。

ちくわぶさんもクラゲと同じ印象を受けたようで、インタビューでシキサイさんを「工夫があっていいですよね」と称してます。

 ・ Tシャツブランドインタビュー「ちくわぶ編」

■ポストグラフィックTシャツ

プロダクトデザイナーであるシキサイさんは、Tシャツをどのような観点で捉えているのでしょうか?

例えばTシャツのプロジェクトだと、「ポストグラフィックTシャツ」って僕らは呼んでいて、一時期Tシャツはメディアだなんて言われ方をして、Tシャツにのっているメッセージをみんなで交換し合う。

そんなメディアとして扱われる事が多かったんだけど、メディアと言われた瞬間にグラフィックの世界に閉じ込められたようで、でもTシャツは立体物じゃんかって感じて、Tシャツを立体物にポンと引き戻した。

AJANAKU | A Talk with Noto-Fusai より)

一般的なTシャツのプリントされるデザインに着目する「2D」という考え方から、立体物であるTシャツに「3D」なデザインやギミックを施し、Tシャツを元来の立体物に引き戻したことが、シキサイさんが起こしたTシャツ革命かもしれません。

それを称し「ポストグラフィックTシャツ」というのは言いえて妙です。

■2005年限定プロジェクト「シキサイ」の現在

元々2005年夏限定でスタートした「シキサイ」というプロジェクトは、現在どうなったのでしょうか?

遊び心のあるTシャツは、ファッション業界だけではなくアート業界でも「アートで楽しいTシャツ」と評価を受け、2005年7月に六本木ヒルズ 森アーツセンターミュージアムショップでの取扱いを皮切りに、多くの国内外美術館ミュージアムショップで取扱いされるようになりました。

 シキサイ 取扱い店リスト
 http://notofusai.com/stockists_j

そして、プロジェクトは 2005 年だけで終わらず、その後も継続的に新作をリリース。現在では多くのTシャツが販売中です。

現在はTシャツ以外のプロダクトデザインも行ってます。

シキサイ同様の遊び心のある手ぬぐい「tenuto」。

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日常の風景を切り取ったキャンバス「Canvasworks」には、全てその風景に応じた実用的機能が備わっています。

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やわらかな線で表現されたリボンアクセサリー「Lines」。

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動かなくなった時計を解体したブローチ「once」。

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部屋がしゃべりだすステッカー「モノローグ」。

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■夫婦デザイナーデュオ「能登夫妻」の誕生

ここから「能登夫妻」という夫婦デザイナーデュオが誕生し、シキサイは能登夫妻によるプロジェクトのTシャツブランド名となりました。

 能登夫妻
 http://notofusai.com/

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Tシャツにとどまらないプロダクトデザインの源流は、オランダの「Droog」にありました。

20世紀末、デザインの世界に全く新しい潮流をもたらし、革命といっても過言ではない程、その後のデザインの、そしてデザインコンセプトのあり方に圧倒的な影響を与えたグループ/デザインレーベル/ムーブメント。それが「ドローグ」です。

かくいう能登夫妻・夫も、ドローグに魅惑されまくり、憧れて、ドローグ総本山ともいえる学校デザインアカデミーアイントホーフェンに留学までしてしまった程、強い影響を受けたデザイナーの一人です。そういう因果を考えてみると、ドローグの存在なくして、シキサイのコンセプトは生まれなかったのではないかと思います。一見シキサイは、そんなにダイレクトにドローグ的ではないかもしれません。

だけど、私達の世代のデザイナーが生み出すものは、「ドローグ以降」であることを決して免れないんじゃないかなあと、思います。ドローグデザインは、そんな巨大な存在なんです。

さてそれで、、、それを踏まえた上で、、なんの因果か、どういう風の吹き回しか。ドローグがアムステルダムに作った展示スペース兼オフィス兼フラッグシップショップ「Droog at home」のショップにてシキサイを扱ってもらうことになったのです。能登夫妻・夫のコネクションで、っていう訳ではないんですよ。いや、、もしかしたらだれかが伝えてくれたのかな?

ほんと、腰を据えて続けていると、いろんなタイプの風の吹き回しがあるものです。「ご縁」というものですね。今回のニュースに「!(びっくりマーク)」が一つも出てこないので、冷静風ですが、、これは能登夫妻にとってすごく嬉しい、特別嬉しいニュースなんです。上記のような経緯を振り返り思い起こし、そして、なんというか、、、しみじみうれしいんです。

http://www.droog.com/

(能登夫妻メルマガ「能登夫妻からのおしらせ 26」より)

最初のきっかけとなった「シキサイ」は、ネクストプロジェクトとなり「シキサイソノニ」にバージョンアップ。カットソーを立体的に縫製した、立体性をトコトン突き詰めたアイテムをリリースしています。

 シキサイソノニ
 http://shop.notofusai.com/category/sononi

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■「Tシャツ」の枠を飛び越えて「地域デザイン」へ

能登夫妻は岡山県北端の山村集落「梶並」に家族で移住。田んぼと畑を借り、全て手作業の自然農を行い、自らの日常生活もデザインしています。

そして、旦那さんは「美作市地域おこし協力隊」に就任。岡山県美作市の委託を受けて農業・林業・地域おこしの活動も平行して行い、地域のデザインも。

最初Tシャツからはじまった活動が、プロダクトデザインとなり、今は自らの生活と地域デザインを行うようになったシキサイさん、いや能登夫妻さん。今後の活動も楽しみにしてます。

■まとめ

最後にシキサイの素晴らしさを改めてまとめてみました。

 ・「白と黒のみ」と自ら表現手法に制限を加え、制作手法に頼らない表現

 ・Tシャツを立体で表現しただけでなく、躍動感も表現

 ・Tシャツは「メディア」から「立体物」に引き戻し、ポストグラフィックTシャツへ

 ・Tシャツ以外のプロダクトデザインにも積極的にチャレンジ

 ・プロダクトデザインの枠を超え、現在は生活や地域デザインにトライ

シキサイの登場により「Tシャツの概念は一歩進化した」と言ってよいと思います。

能登夫妻の活動内容は以下でで確認できるので、ご興味ある方は是非登録を。これからも色んなワクワクを楽しみにしてます。

 メルマガ「能登夫妻からのおしらせ」
 http://shop.notofusai.com/mailmagazine

 能登夫妻 Twitter (@notofusai)
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 notoshop
 http://shop.notofusai.com/

■あわせて読みたい

 ・ Tシャツインタビュー「シキサイ」編
2005年10月22日に東京Tシャツ部でインタビューを行いました。

 ・ ajanaku
インターナショナルウェブマガジン「ajanaku」に掲載された能登夫妻インタビューです。日本語版はページ後半に掲載されています。

 ・ Loopto
ウェブショップ「Loopto」に掲載された能登夫妻インタビューです。動画も掲載されています。

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