クラゲが「吉田ナゴヤ堂本舗」の凄さを徹底的に語る回

今回は吉田ナゴヤ堂本舗さん(以下、吉田さん)について。

 吉田ナゴヤ堂本舗
 http://www.yoshida758do.com/

2004年からスタートした文字オンリーのTシャツ屋さん。キャッチフレーズは「まぬけTシャツ一本勝負!」と、脱力するような文字ネタメインに展開しています。

脱力文字ネタ系ということで、残念ながらなかなか凄さが伝わりづらいブランドさんだったりします。

吉田さんはスゴイのに、その凄さがどこでも語られていないので、誰も言わないんだったらクラゲが言う!ということで、今回のコラムとなりました。

■吉田ナゴヤ堂本舗の2つの凄さ

1つ目の凄さは「着ている人を主役にするTシャツ」です。

一時期ネタTシャツが盛り上がった時期がありました。文字ネタTシャツはジャンルの特性上、「ネタの強烈さ」を追求しがちになります。

イラストTシャツであれば、ある1つのテーマでも様々な表現が行えます。しかし文字ネタの場合、工夫の余地はフォントの種類や大きさ、文字の配置くらいでしょう。

そのためインパクトのインフレ化が起こり、どんな文字ネタを使ってでも笑わせてやろう、となりました。

結果、行き着いたのは「着る人不在のTシャツ」が溢れる状況に。

誰が着てもインパクトはあるが、同時に誰が着てもいいTシャツだらけになったのです。ネタ度が極限まで高まった強烈なインパクトはその人がそのTシャツを着る必然性が無くなったのです。

一方吉田ナゴヤ堂本舗のTシャツは、どのようなネタでも「着ている人が主役」という姿勢を忘れません。

中でも、初期の名作「佐藤じゃない」は、吉田さんらしさが特に色濃く出ているアイテムといえます。

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非佐藤さんが着る「佐藤じゃない」、そして佐藤さんが着る「佐藤じゃない」。友達がこれを着ていたらその友達が佐藤さんであろうとなかろうと、つっこみ入れたくなります。それこそが「着ている人を主役にする」なのです。

2つ目の凄さは、「コミュニケーションが生まれるTシャツ」です。

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友達がこの「ゆれてない?」を着てきたときに何も言わない人はいないでしょう。ちょっと考えただけでも複数のつっこみが思い浮かびます。すなわち、会話の糸口が様々な方向に広がる可能性があるということです。

この2つの特徴から言えるのは「着ることで本人もネタもお互い輝くTシャツ」なのが、吉田ナゴヤ堂本舗のTシャツなのです。

■Tシャツ屋さんのファンが多い

実は、Tシャツブランドさんでのファンは多く、まめた本舗さん、FREE KETCHUPさん、パイライトスマイルさん、アルシュさんが、インタビュー内で以下のように語ってます。

まめた本舗 : 同じネタもののTシャツでは、これから合同イベントを一緒にやろうと画策している吉田ナゴヤ堂本舗さんも気になる存在です。吉田さんの文字ネタ一本の気骨は筋が通ってて好きです。普段はただの変なおじさんなんですが(笑)
まめた本舗インタビューより

FREE KETCHUP : 文字一本でやっている「吉田ナゴヤ堂本舗」さんは意識せざるを得ない存在ですね。自分のところは、地図を載せたりすることはあるものの、文字が中心になるデザインなので、吉田さんには、すごく勉強させてもらっています。吉田さん、実はものすごく絵がうまかったらどうしよう、とか思っているんですけど。お話をしているとそういうストイックなところがあるんじゃないかと思っています。
FREE KETCHUP インタビューより

パイライトスマイル : 「吉田ナゴヤ堂本舗」さんです。すばらしいセンス!いつも売り場を盗み見ては歯軋りしてたりします。僕もいつかは「博物系ネタT」とか作りたいです!
パイライトスマイルインタビューより

アルシュ : 吉田ナゴヤ堂本舗さんのTシャツが好きです。ネタの精度が他に類を見ないほど洗練されているというか、計算されているというか。作品としてはTシャツ単体でも完成しているのに、着る人や着ていく場所によっては更に何重もの意味が加わって面白さが倍増する感じがたまらないですね。
アルシュインタビューより

■唯一の「クラゲ賞」受賞者

どうしてクラゲが今回喜び組のように吉田さんをほめまくっているのか。その理由は2004年までさかのぼります。

2004年3月にスタートした「Tシャツビジネス塾」。吉田さんは第一回Tシャツビジネス塾の一番最初に応募した、一番最初の生徒さんなのです。

塾のカリキュラムには塾生限定のデザインコンテストがあり、講師陣がデザインを見て賞を選出するというものでした。そこでクラゲ賞として選出したのが吉田さんです。

そこから吉田さんはTシャツブランドを立ち上げ、現在に至るのです。吉田さんがTシャツ屋をはじめるきっかけはクラゲだったのです。ということで、クラゲの中でも色々な責任を感じてこのコラムを書いているわけで…。

このクラゲ賞、次のTシャツビジネス塾からは何故かなくなり、僕以外の講師陣による賞となりました。どうしてクラゲ賞だけが無くなったのか、真相は今となっても不明のままです。

唯一はっきり言えるのは300人以上の卒業生を輩出したTシャツビジネス塾で、クラゲ賞を受賞したのは、吉田さんだけです。

■吉田ナゴヤ堂本舗さんから返事がきた

こちらのコラムを書き上げた後、吉田さんにメールしたところ、吉田さんからのレスが返ってきました。読んでみて非常にグッとくるTシャツ論を展開されていたので、以下にてご紹介を。

■言葉に出さずとも語りかけられるように

東京Tシャツ部クラゲ様へ。

吉田ナゴヤ堂本舗吉田です。

【ネタTの盛り上がり→インパクト重視→着る人不在のTシャツ】という読み解きは、さすがと思わされました。

その人が着る必然性は、大事なことですね。

「これはアナタが着るべきTシャツなんですよ」と、言葉に出さずとも語りかけられるようなTシャツを作れればすばらしいと思います。

例えば、「B型魂」はB型以外の人を最初から切り捨ててますが、その分B型の人には訴えかけるんじゃないか、という考え方なのです。

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他の血液型も作ればいいのにとも言われますが、それをしないことでブランド全体でB型の味方に立つ、という効果もあります。

まぁ、その後結局「B型じゃない」も作ってしまいましたが…。

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■Tシャツでコミュニケーションを喚起する

「コミュニケーションが生まれるTシャツ」も理想です。

知らない人に話しかけられたり、同じフロアの別の部署で働く人に話しかけられたりということが、ワタクシには実際にあったのですが、こういう本来そこにはなかったはずの会話が、たかがTシャツで生まれたらステキだと思うのです。

ナゴヤ堂の中でもそれほど人気アイテムではない「ヒマ週末」というTシャツがありますが、これなんかコミュニケーション起動力がものすごいと思うんですけどもね…。

「誘ってください」と言わんばかりじゃないですか!

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■Tシャツが完成する瞬間とは?

「Tシャツ作り」を考える時、そこには「Tシャツはいつ完成するのか?」という問題があると思うのです。

ワタクシはこれを「買って下さった方が、Tシャツを着て、人目につくところに出ていただいた時」と思っています。

着られることは必要最低限で、部屋着となるのはTシャツ作品としては意味がないと思うのです。やはりワタクシにとって「Tシャツはコミュニケーションツール」なのですね。
従って、ひとつのTシャツをその完成に持って行くためには、当然ながら「着る人」の協力が不可欠なのです。

さらに重要なのは、着る人が効果を工夫する過程、そして狙った通りの効果が得られる部分が楽しいものであることに気づいていただくことです。

 ワタクシがネタを考えてTシャツを作って売る
   ↓ 
 買う人(=着る人)はネタの意図を理解し、どういう着方(いつ、どんなシチュエーションで等)をすれば効果的か考えて買って着る
   ↓ 
 狙った通りの効果でコミュニケーションが発生する

これが理想的な形だと思います。

こうなると「冗談を仕掛ける人」が増え、吉田ナゴヤ堂の壮大な目標「世間にもっと冗談をあふれさせる」に一歩近づくことができるのです。

デザインする側がTシャツについてできることは、全体の 60~70 % くらいじゃないかと思っています。ですので「作品として作り過ぎてしまわないこと」が重要な気がします

工夫する余地をお客様に残しておくことを忘れないようにしたいと思うのです。

吉田からは以上です。

■最後にクラゲから

吉田さん。ありがとうございました。吉田さんのTシャツ論、しっかり受け止めました。
趣味のTシャツ作成からスタートし、現在はTシャツブランドが本業のあるブランドさんがクラゲに言いました。

「吉田さんは本当にTシャツを楽しんでますよね。Tシャツを仕事にすると、どうしても遊び心を忘れてしまいがちになるんです。マイペースで活動されている吉田さんは自分の納得が行くアイテムだけを出してて、大事なものを忘れていないんですよね」と。

ここまで読んだ方には、是非、改めて吉田ナゴヤ堂本舗Tシャツをご覧いただきたい。ここで書かれた観点で見直してみると、きっと今までと違った見え方になりますよ。


(2013/8/13 追記)
吉田ナゴヤ堂本舗ブログにて、吉田さん直々にこのコラムの解説を頂きました。併せて読むと非常に楽しめますので、是非ご覧ください。

 ・ 東京Tシャツ部にナゴヤ堂コラムが! (吉田ナゴヤ堂本舗・店主の日記)

■おまけ

吉田さんがまめた本舗さんと一緒にやっている「ネタTシャツポッドキャスト」でこういうエピソードが飛び出しました。

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 ネタTシャツポットキャスト
 http://www.voiceblog.jp/netat/

『文字ネタ一本で活動をしている吉田さん。デザインにこだわらないあまり、印刷工場に電話で「今度は、私はB型ではありません、って文字を印刷してください。フォントも配置もそちらでお任せします」と伝えたら、勝手にTシャツ印刷して送ってきたそうな。』

これはウソか本当か?気になる方は是非「ネタTシャツポッドキャスト」をお聞きください。このエピソードの真相が明らかになります。

■あわせて読みたい

 ・ ネタTシャツ定食
   →まめた本舗さんと一緒にやっているイベントです。
 ・ ナゴヤ堂のTシャツで打線組んだwww
   →吉田さん自ら自分の作品で打順を組んでみました。
 ・ Tシャツサイトインタビュー:吉田ナゴヤ堂本舗編
   →東京Tシャツ部で以前インタビューを行いました。
 ・ Tシャツスペシャルインタビュー:Tシャツビジネス塾(後編)
   →インタビュー内で吉田さんについて触れられています。

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