第147回目「Tシャツブランドインタビュー」~ マニアパレル(後編)

第147回目のTシャツブランドインタビューは「マニアパレル(後編)」です。

マニアパレルのサイトはこちらです

 マニアパレル
 http://blog.livedoor.jp/r2koba/


今回のインタビューは マニアパレル さんです。

工場、ダム、巨大建築物等をモチーフにTシャツをデザインしているマニアパレルさん。工場萌えのクラゲが今一番お話を伺いたかったブランドさんについにインタビューを行うことが出来ました。

今回は超ロングインタビューのため、Tシャツインタビュー初の「前編・中編・後編」の3回に分けてのお届けとなります。まだ前編・中編をご覧になってない方は、先に「マニアパレル(前編)」「マニアパレル(中編)」をご覧下さい。

 マニアパレルインタビュー(前編)
 マニアパレルインタビュー(中編)

今回は最終回となる「後編」をお送りします。

売れ線のデザインを行わない理由、数々のマニアパレル着用有名人のエピソード、Tシャツをデザインする喜び、今後の目標、などです。

さて、今回はどういうお話が飛び出すでしょうか?お楽しみに。

第147回目「Tシャツブランドインタビュー」~ マニアパレル(後編) (2012/5/12 収録)


――売れ線は狙わない

クラゲ : BAD_ONさんがご自身のブランドの中で、特に思い出に残っているものを教えてください。

BAD_ON : うーん、無理して作っているものが一つも無いので、全部好きです。ただ、売れなかったTシャツに対しては、何でこんなに素敵モチーフなのに売れないんだ…と思います。って、自分でほざいている時が真骨頂だと思うんですよ(笑)。

まー、ニッチなものって誰も分かってくれないですよ。その分かってくれないっぷりを自虐的に愛す!みたいなものと思ってます。「最初から売れないと思ったけど、本当に売れなかったですね。はっはっは!」ってみたいな時が、本人は楽しかったりするので。なので、Tシャツ化するときには、売れ線は狙わない!

クラゲ : 「狙わない!」。断言しましたね(笑)

BAD_ON : 多分これやると売れんだろうなって思いながら作っても面白くないし。デザインから受発注業務まで全て自分でやってるんで、注文来すぎると面倒くさいなって思っちゃうこともあるんで(笑)。宛先書いたり、送ったりするのまで全部一人でやってます。妻は一切マニアパのことは手伝ってくれないので。

クラゲ : サラリーマンやりながらTシャツ屋さんやっているミックデザインファクトリーさんにインタビューしたとき(「ミックデザインファクトリー編」)におっしゃってたのが、会社の飲み会で遅く帰ってきたときに限って急ぎの注文がたくさん来てて、夜中に酔っ払いながら泣く泣く版下洗って刷ってる、といううれしい悲鳴があったりするそうです(笑)

BAD_ON : あるある!僕は最近、朝早起きして受発注業務を行ってまして、逆に健康的(笑)



BAD_ON : 日中はサラリーマンとしての仕事してますからね。「マニアパレルを本業でやってるんですか」と、よく聞かれるんですが。

クラゲ : 僕もマニアパレルは本業でやってると思ってました。

BAD_ON : 違うんですよ。企画 ・ デザイン ・ 発送や果てには行商 ・ 小間使いまでも全部一人でを行ってます。商品を収めに行く時も、IKEA の青い袋を抱えて、電車に乗って一人で納品に行ってます。発送費がもったいないんですよ。定期で行けるんで電車に乗って自分で納品すると交通費もかかんないし。

ぶっちゃけ、ギャンブルや金かかる趣味やってると思えば、楽しいですよ。ある意味、マニアパレルの活動がギャンブルですけど。

毒づくし手ぬぐい
毒づくし手ぬぐい

――数々のマニアパレル愛用有名人

クラゲ : ブログで拝見したんですが、芸人のなだぎ武さんもマニアパレルを着てらっしゃるそうで。

BAD_ON : そうですね。『PS』っていう女の子向けのファッション雑誌で「芸人Tシャツ特集」があり、ダムのTシャツを着てくれてたんです。他の芸人さんが PAUL & JOE とかのTシャツを着ている横に、なだぎさんがきているマニアパレルが並んでるんですよ!コメントに「これ、今お気に入りで着てるんです」ってあって、まじかよ!って。

先日初めてなだぎさんとお会いして「そのダムTシャツとトートバッグのデザインやったものです」とお伝えしたら「お前かー!着てるよ。気に入ってるよ」って言ってくれて、嬉しかったですね。

なだぎ武さん着用のダム放流Tシャツ
なだぎ武さん着用のダム放流Tシャツ

マニアパレルを着用してナタリー登場のなだぎ武さん
マニアパレルを着用してナタリー登場のなだぎ武さん

クラゲ : マニアパレルでうれしい思い出たくさんですね。

BAD_ON : ですね。でも、芸能人や有名人の方が着てくれるのがうれしいんじゃなく、ダムであり工場であり、そのインダストリアルなモチーフが好きで、たまたまマニアパレルに出会って着てくれてるっていうのがうれしいんです。オファーいただけてるみんなそうだし。

クラゲ : 同志見つけたって感じですね。

BAD_ON : そうそうそう。ブラタモリのスタッフさんにマニアパレルのコト気にしてくれてる人がいて、暗渠のTシャツ作った時にタモリさん絶対好きだろうから、プレゼントしてくれたらしいんですよ。タモリさん曰く「はぁー、暗渠のTシャツなんてあるんだ。いいね」って言ってくれたらしいです。着てくれてるかどうかはわかんないですけど。

暗渠Tシャツ
暗渠Tシャツ

クラゲ : シビれるエピソードです。

BAD_ON : 有名人の方も着てますというのをトップページに載せたほうが売れるのかなぁ?、それよりは自分の好きなモチーフを検索したらたまたまマニアパレルを発見してくたりとかの方が胸熱ですね。

こないだもマクロスの河森正治監督から「バケットホイールエクスカベーターTシャツ」にオファーいただけまして。

「Tシャツが届いたその日からお気に入りとして愛用しています。バケットホイールは、現在放送中のアニメ『AKB0048』の1話にも登場させていました。ドイツに現在する実物をいつか見に行きい!」というメールと着用写真もらって、喜びでしばし踊っちまいました。

河森正治監督着用のバケットホイールエクスカベーターTシャツ
河森正治監督着用のバケットホイールエクスカベーターTシャツ

大好きなモチーフへの「好き」という気持ちで作ったアイテムで雲の上のヒトと接点が持てるなんて!検索してたら偶然マニアパレルを見つけてくれたらしいんですよね…。



BAD_ON : マニアの方とのメールやネット上のやり取りも面白かったりします。「それモチーフにしますか」「わかってらっしゃる」「その発想なかったですね」「でも、このデザイン一般の人に届きますかね?」とか。でも「いや、一般の人、誰もマニアパレル見てないと思うし」みたいな。

そうして、赤字ライン突破しましたと言うと一緒になって喜んでくれて「じゃ、記念にもっと買います」「いやいや、そういうのは無しで」「いやいや、一週間分欲しいです」みたいなやりとりが一緒に作ってる感あってね。いいですね。

――女性のほうがマニアック?

BAD_ON : マニアパレルファンでも、興味のないデザインは完全にスルーされます。

こないだビール部のTシャツをデザインしたんです。ダムマニアの方が酔っ払ってる時「BAD_ONさん、ビール部のTシャツ作ってくれませんか」ってツイートしてきて、それでデザインしたんです。

最初「ビールブ」ってカタカナのロゴTシャツにしようかなって思ったら、ダムの利水領域と洪水領域のことを思い出して。ここまでいくと利水領域なんだけど、ここからは洪水領域ってのを泡とビールの部分でやったら面白いぞ、って思いついたんです。

ダムって現地に行くと利水領域と洪水領域の断面図があって、電力会社からの説明書きがあるんですよ。ここまでは電力に使っていいけど、ここからは治水被害があわないような領域になっている、みたいな。

ビール部
ビール部

デザインしている時に、ダムに興味無いけどビール飲むんで買いますって人やダムマニアなので買いますって人、酔っ払いだから買いますって人が沢山いるだろうな、って50人とかから注文がきたらどうしよう!赤字じゃなくなるぞ!と思ったんですが、実際はスルーされまくりでしたね(笑)

クラゲ : 好きが高じてTシャツ作りを始めた方のデザインは見てるだけで楽しいです。

BAD_ON : それわかります。可愛くキャラクターをデザインした方が売れるのかなーって思うときもあります。依頼主が女性だったからかわいいのがいいのかな、ってデザインしたら「キャラクターみたいなのいいです。もっとマニアックにしてください!」って言われたり(笑)。こういうマニアならではの反応も面白いというか「そうだよなー」って思ったりね。

――Tシャツをデザインする喜び

BAD_ON : 軍艦島と並んで廃墟マニアの間で聖地と呼ばれる、伊万里にあった「川南造船所」というところがありまして。今は更地になっちゃたんですけど。

以前軍艦島の写真集『軍艦島 全景』出す時のイベントで、マニアパレルさんにTシャツデザインをして欲しいと、言ってくれたオープロジェクトさんが、川南造船所のスマートフォン用アプリ『さよなら川南造船所』を出すって言うんでコラボさせてもらいました。



プロのTシャツデザイナーに発注した方が絶対売り上げが上がるんですけどって思ったんですが「マニアパレルさんじゃないと、僕らのニュアンスってわかってくれない」と言われて、マニアの心意気でやろうと決意しました。

労働組合のマークをデザインしたかったので、スタッフの方を通じて、労働組合にいた方にお願いをしたら「島の記憶を残してくれるのであれば、炭鉱のマークを使ってもいいですよ」と言ってくれまして、炭鉱の旗のマークをデザイン使うことが出来たんですよ。

クラゲ : 島の記憶に残したいっていう気持ちからなんですね。

BAD_ON : そうですね。川南造船所もコンクリートの天井に6つの穴が開いててソコから光の矢が6本ばーっと出てるんです。ものすごい幻想的でその光の輪の周りに雑草がティアラみたいに生えてるんです。これは現地に行ったことある人であれば、わかってくれる光景です。でもわかりずらくてねぇ。ほとんど関係者しかオファーくれてないですね(笑)

失われた造船所T
失われた造船所T

着てると「カッコいい!何ソレ、え、廃墟なの?そーゆーの言わない方が売れるんじゃないの?」とか言われるし(笑)。でもねぇ、アップルストアでのアプリ発表イベントでズラリと並んでいただいた時は感動しましたよ。



BAD_ON : ある日、廃墟マニアの友達から「大久野島行かね?」誘われて行ったんです。島の観光協会は「ウサギと温泉」でいきたいらしいんだけど、「大久野島」でググると、廃墟サイトが色々と。その二面性が面白くて。

実は戦前・戦中は地図から消されていた島で、世界法規を破って毒ガスを製造していた島なんです。その毒ガス製造施設が今も島に残っていて。ウサギ目当てで島に行くと、毒ガスタンク跡地とか廃墟が今もが普通に残っているんですよ。

島には有志による「毒ガス資料館」があるんです。平和のためにこの歴史を忘れるな、ということで。中には犬や馬が毒マスクしている写真があって、すごい衝撃で…。そんな体験から、ウサギが毒マスクした「地図から消された島」というTシャツを作りました。

大久野島T/マスク・ザ・バニーT
大久野島T/マスク・ザ・バニーT

すると「こんな場所が日本にあるのかと知りました」って感想をもらったんですよ。毒ガスとウサギという全く別のジャンルを合体させてTシャツにして、かわいいけど毒がある、というのにすごい共感してくれたのが、うれしいですね。とうか話長いですね僕。

――絶対に自分の好きなモチーフしか作らない

クラゲ : 今後の目標を教えてください。

BAD_ON : うーん、目標決めてないんですよね。野望ないんで(笑)。ただね昔から熱量は全く変わっていないので、自分が好きなもののモチーフしか絶対作らない。「これだったらかわいい」「これだったら着たいな」って思うデザインしかしない。

基本的に「行ったことがあったり、目に触れたものじゃないと作らない」そして「マニアの方と共感できないと作らない」という勝手な思い込みで作っていきます。

長く使って欲しいんで素材もしっかりしたものを使って。実物を手にしてもらった時に「ネタもののレベルじゃねぇ、クオリティ高っ!」って言ってもらえるのがすごくうれしいので。そんなトコかなーです。

クラゲ : 今日はどうもありがとうございました。

BAD_ON : ありがとうございました。




マニアパレル(後編)はここまでです。

前編」「中編」「後編」でマニアパレルインタビュー完結となります。

数々の有名人が着用するマニアパレルのTシャツ。でも「有名人」が着ているからうれしいのではなく、マニアとしての同士が着てくれているからうれしいというBAD_ONさん。

売れ線を狙わず、絶対に自分の好きなモチーフしか作らないと断言している点が、非常に共感できました。

クラゲの感想は、ユニクロなどの大手アパレルが様々なコラボTシャツをリリースしている今、個人Tシャツブランドの生きる道をマニアパレルにみました。

熱烈なマニアに支持されるTシャツをリリースする。これは大手アパレルでは絶対にマネできない行為です。インターネットを通じ、世界に散らばっている熱量の高いマニアに向けてリリースし続けるマニアパレルに、大いなる「インターネット的」をみました。

今回はお会いしてインタビューできて、非常に楽しかったです。ご協力いただいたBAD_ONさん、本当にありがとうございました。

まだ「マニアパレル(前編)」「マニアパレル(中編)」をご覧になってない方は、併せてご覧下さい。

今回ご協力いただいた「マニアパレル」の公式サイトはコチラ。

 マニアパレル
 http://blog.livedoor.jp/r2koba/

このインタビューを読んだ後にTシャツを見てみると、新しい発見があるかもしれませんよ。

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