第146回目「Tシャツブランドインタビュー」~ マニアパレル(中編)

第146回目のTシャツブランドインタビューは「マニアパレル(中編)」です。

マニアパレルのサイトはこちらです

 マニアパレル
 http://blog.livedoor.jp/r2koba/


今回のインタビューは マニアパレル さんです。

工場、ダム、巨大建築物等をモチーフにTシャツをデザインしているマニアパレルさん。工場萌えのクラゲが今一番お話を伺いたかったブランドさんについにインタビューを行うことが出来ました。

今回は超ロングインタビューのため、Tシャツインタビュー初の「前編」「中編」「後編」の3回に分けてのお届けとなります。まだ前編をご覧になってない方は、先に「マニアパレル(前編)」をご覧下さい。

今回は「中編」をお送りします。

30年間大好きなミュージシャンからのTシャツデザイン依頼、マニアから熱望されてはじめたインターネット通販、マニアとのキャッチボール、やるからにはとことんやった「マニアパレルの手ぬぐい」、マニアの心意気、などです。

さて、今回はどういうお話が飛び出すでしょうか?お楽しみに。

第146回目「Tシャツブランドインタビュー」~ マニアパレル(中編) (2012/5/12 収録)

――30年片思いしているミュージシャンからのメール

BAD_ON : 個人的に嬉しかったのは、ムーンライダーズに関してです。前々からすっごいファンで。

メンバーの鈴木博文さんが「歯車とか、鉄塔とか、ガントリークレーンのモチーフのTシャツあれ、どこのやつなの」「マニアパレルっていう、インディーズブランドだよ」って。話になったらしいんです。

歯車Tシャツ
歯車Tシャツ

鈴木さんがツアーや普段着で着てくれていたらしいんです。ムーンライダーズは「鈴木兄弟」というスピンアウトバンドがあるんですけど、ある日その鈴木兄弟のツアーTシャツ作らないかって依頼が入って、めっちゃくちゃ感動しました。

憧れのヒトが、僕のデザインを見て「ああ、もう作ってきてくれたんだー、ありがとう。めっちゃくちゃいい、これもいいし、これもいいし、全部作りたいよ」と言ってくれて! 30 年間片思いしてた憧れの人が、自分が作ったものをずっとほめまくってくれてる!!!

そして、鈴木さんのレーベルサイトやツアー会場でTシャツを販売してくれました。コンサートでご本人が着てくれた上に、招待席にまで入れて頂いて、これにはかなりグッときましたね。

鈴木さん着用Tシャツ
鈴木さん着用Tシャツ

クラゲ : 依頼のメールを見た瞬間ビックリしたんじゃないですか。

BAD_ON : 声にならない叫び声をあげちゃう感じでした。

クラゲ : これむちゃくちゃ嬉しいエピソードですね。自分の憧れの人からメールが届くインターネットって素晴らしいですね。

BAD_ON : 自分が憧れていた人にも直接が届くんだなぁと思うと嬉しいですね。
そもそも自分の大好きなモチーフの事に対して凄い活動をされてる方々と、次々出会えたっていうのがすごい嬉しいですし。インターネットがなかったら、マニアパレルの活動は出来なかったでしょうね。

――マニアの熱量を全て引き受けた「イタコ」

BAD_ON : たとえば『工場萌え』の時もそうだし。



写真集が出版される時、文章書いてる大山顕さんとカメラマンの石井哲さんから「工場ナイト」っていう出版記念イベントするんだけど、そのイベント用の工場Tシャツ作ろうよって話になったんです。

昔ながらのギザギザ工場の下に、ナイトだから星入れて。最後にロシア語でコンビナートって入れたら、うわぁ、これめっちゃロシアン・アバンギャルドじゃんって我ながら興奮しながら見せたら「コレしかないね!何より着たい!」って著者の2人も出版社の人も気にいってくれて。

工場T2007
工場T2007

壇上に登る人たちの分作って、残った分を「欲しい人いれば販売します!」って言ったら売り切れちゃって。そこで「インターネット通販やってよ」って色々な方に言われて。欲しいっていう人がいてくれたら作ります、と発表したらすごく注文がいただけたんですよ。

クラゲ : それは嬉しいですね。

BAD_ON : で、ブログを作ったら、色んな方が待ってました的な感じでリンク張ってくれて、その会場で買えなかった方々が「よくぞやってくれた」ってみたいな感じでサイトに来てくれて。

次は何をモチーフにTシャツを作るんですかって言われて。石井さんと大山さんが、コンビナートの海岸沿いにあるガントリークレーンが立っているとキリンに見えるって話をしてて、これをかわいくデザインしてくれないですかってリクエストされたんです。

で、ちょっとかわいめに作るんですよ。扱うジャンルからするとガチガチにハードなデザインと思うかもしれませんが、僕はもうちょっとポップで、かわいい感じで、カジュアルな北欧雑貨みたいな感じにデザインでいきたいなって思ってて。そういう感じにガントリークレーンをデザインしたらけっこう女の子が「あ、かわいい」って買ってくれたんです。

キリンT
キリンT

さらに、テトラポットやネジやジャンクションのような、いわゆるインダストリアルモチーフでも色々デザインしました。頭の中でイメージが浮かんだらデザインするんで、1つのアイテムに対して5、6案デザインを作ります。今やどんだけデザインしたんだってくらいデザインしてます。

クラゲ : BAD_ONさんはマニアの熱量を全て引き受けたイタコのように見えてきました。熱量をTシャツという形にすることで、マニアから俺の熱量を形にしてくれた!って喜んでいただけるっていう。

BAD_ON : そうですね。みんな、Tシャツにこめた思いを受け取ってくれるし、反応を返してくれるんですよ。Tシャツという肌に触れるものを自分の好きなモチーフでデザインが出来て、それにオファーしてくれるのが本当に嬉しいです。購入してくれるのって最大の評価なんだなっていうのは、リリースする立場になってすごいわかりました。


フレT

クラゲ : ファンの方とのコミュニケーションのキャッチボールがいいですね。

BAD_ON : 「かわいいし、カッコいい」って言ってくれる人もいるし「ゆるさも入っているのがツボなんですよ」って言ってくれる人もいてうれしいです。イラストレーターまんまのデータだと固すぎるので、昔のマイクロフィルムから再複写したような処理とかして、絵柄をまろやかにしたりとか。その辺のデザインのサジ加減をわかってくれる人とかもいて、すごく嬉しいですね。



――「心意気」を買うマニアパレルの手ぬぐい

クラゲ : Tシャツの次は手ぬぐいを作ったんですね。

BAD_ON : そうです。最初は団地の手ぬぐい作りたくて。手ぬぐいって総柄だったり繰り返し柄じゃないですか。団地、特にニュータウンとか行くと、同じ団地がずらーっと並んでいて、この光景を柄に出来たら面白いな、と思いまして。Tシャツで総柄にするとすごい大変なんで、手ぬぐいでやってみようと。

団地手ぬぐい
団地手ぬぐい

プリントの手ぬぐいは裏が白抜ちゃけると凄い安っぽいと感じるんですよ。だから裏まで染め抜けてる手ぬぐいが好きで。少ロットで作ってくれる染め業者さんがいて、そこで作ってもらいました。

クラゲ : 少ロットで作ってくれる業者さんが見つかったのが嬉しいですね。

BAD_ON : 嬉しいですね。最低ロットが千とか万だと製品化に踏み切れないじゃないですか。最低ロットが小さいと、最悪売れ残っても友達に配ればいいかって。

クラゲ : 和柄の手ぬぐいは山ほど売っているけど、マニアパレルが扱うモチーフの手ぬぐいはなかなかないですね。

BAD_ON : ガスタンク ・ ジャンクション ・ エスカレーター ・ ダム ・ 工場 ・ 線路 ・ パイロン ・ ブロック塀とか。手ぬぐいはいつも手に持ってるもらえますからね。時々すっごい洗濯して色あせている手ぬぐい使ってくれている人を見て、ああ、愛用してくれているんだな、嬉しいなと思いますね。

クラゲ : そこまで使い込むってことは、完全に自分の一部ですね。

BAD_ON : そうそうそう。ガンガンに愛用してくれて嬉しいし、額に入れて飾ってくれるのも嬉しい。

鉄塔手ぬぐいを作った時は、鉄塔の写真を撮って、そのままこれを染めて欲しいって職人さんにお願いしたんですよ。すると、こんな細まけえのやんのかよって怒られて。いや、抜くけどさぁ、ってやり取りがあって製品化だったんです。次の変電所手ぬぐいの時には勘弁してよって言われたんですけどね。

クラゲ : 変電所手ぬぐいは、とんでもない情報量ですよね。

変電所手ぬぐい
変電所手ぬぐい

BAD_ON : ええ。バイクでツーリングした時、栃木の茂木に変電所をたまたま見つけたんです。何だあれ?って。いくら近づいても大きさ変わらないんですよ、あまりにでかいもんで、スケールアウトしていて脳内での縮尺が変換できない。やっとたどり着いたら大雨が降り出してデジカメが出せなくて…。後日、防水デジカメ買ってもう一度行ったんですよ…。金網の間からデジカメ入れて撮って。

フォトショップから、全部イラストレーターのデジ線に置き換えているんですけど、データがものすごい容量になっているんですよ。イラレで作って複合パスにしなきゃいけないんで、それの変換だけでものすごい時間かかってる。

クラゲ : 多分、染め職人の方が見ると、この線の細かさ尋常じゃない…って思うんでしょうね。だからこれは、見る人が見ると、うわーっ、よくやったって感じてくれると思います。だから「心意気を買う」のかもしれませんね。

BAD_ON : ね、まだいっぱい在庫あるんですけど(笑)



――マニアの心意気だけで請け負ってくれている人脈

クラゲ : マニアパレルのTシャツは、好みの人が見れば一発で気に入ると思うんですけど、問題はどうやって、そういう人に見てもらえるか、かもしれませんね。

BAD_ON : そうですね。マニアパレルは商売もっとうまくやればいいのに、っていろんな人から言われてます。でも、うまくやるやり方がよくわかんねーよ。って。

その辺はもう人の縁というか、マニアの心意気だけで請け負ってくれている人脈だけでやらしてもらっているんで、嬉しい限りです。オファーいただける人も嬉しいですけど、周りの協力してくれている人たちも、ボランティアでやってくれている。「マニアパレルのやっていることは面白いと思うから、協力するの全然大丈夫ですよ。本業で稼ぐんで」って言ってくれてる。

書店員さんTシャツ
書店員さんTシャツ

クラゲ : Tシャツを見て感じたのが、もっとTシャツの値段高くても売れるだろうなあ、だったんですよ。実は。

BAD_ON : 元々マニアパレルを始めるいきさつが、Tシャツブランドじゃなくて、イベントのユニホームとして作りたいっていうのがあって。仲間用に作って、みんなの分も作れればいいな、みたいなのモノだからなぁ、って計算なんですよ。

正直赤字アイテム多数だけどまあいいやって思ってます。まぁ全部自分一人でデザインして販売してるんでこの値段で出来てます。

マニアパレルを始めた後、ロフトプラスワンのイベントで販売させてもらった時に、ハードコアチョコレートの関係者さんから、インディーズブランドっていうジャンルがあるって教えてもらったんです。

これがきっかけでネットを調べたら、東京Tシャツ部さんとかも知って。あ、こういう世界があるんだ、って。

お金は次のアイテムだけ作れる分があればいいと思っているので、自転車操業でやってます。「マニアパレル資金」と呼んでいる僕の貯金がありまして、これが着々と減っているわけですよ。昔は3桁あったのが今は2桁に(笑)。でもねぇ楽しいんですよね。



――マニア度を真剣に突き詰めた結果

クラゲ : 真剣にマニアックさと向き合ってるから、何かが伝わってくるようなところが感じられるのかもしれませんね。

BAD_ON : かもしれません。何か今流行ってるからやってって思われるのは嫌だし、僕もそう思っていないので。マニアである自分が面白がっていることが伝わってくれればいいな。と思ってます。それしかみんなに応える方法がないので。

色々なモチーフでそれぞれに追求している深く濃い人達がいるじゃないですか。その活動は尊敬せざるを得ないんですよ。すっごいクオリティーで写真を撮る方もいるし、情報を調べ尽くしてウェブサイトを作る方もいるし、書籍を出す方もいるし。僕はそういう方々には到底達し得ないのですが、たまたまデザインするのが大好きだし、洋服も大好きだし。

なので、深い人達のリクエストを受けてTシャツや手ぬぐいを作ったら、それをいつも身に着けたり、手にしてくれるかな、って思ったのが元々の始まりなんですよ。

ハイクオリティの写真は撮れない、感動的に伝える文章も書けない、本に出来るほどの知識も何もない、けど大好き!

実際にTシャツを作ったら、マニアの人達から「わかってらっしゃる、BAD_ONさん。コラボして面白かった」や「そうそう。マニアックなコトのカジュアル化を待っていたんだよ」って言ってもらえて嬉しかった。そして、女の子が「かわいいし、ぎりぎり街着で着られる」って言ってもらえたのも嬉しかった。僕としては「ぎりぎりかよ」と思うんですが(笑)。

ハト矢Tシャツ
ハト矢Tシャツ

すごい熱意あるリクエストをもらって、女の子向けの素材のガーゼ素材Tシャツとか、チュニックとかワンピースを作ったこともあります。

主婦の方から旦那に隠れて買ってます、みたいな声も結構頂きます。旦那さんがだんだん感化されて「お前の着てる服かわいいから、俺も買おうかな」って言って、夫婦でマニアパのペアルックになったり。

また「お前のTシャツでクローゼットいっぱいなんだけど、ちょっといい加減にマニアパ増やすのやめてくんない」という声も聞きます。その方は結局「手ぬぐいだと隠せるので、手ぬぐいを購入させて頂きます」となりました。そんな隠れキリシタンのようにしてまで買ってくれてる人もいます。

マニアパレル製 手ぬぐい
マニアパレル製 手ぬぐい

マニアパレル(後編)」に続く




マニアパレル(中編)はここまでです。

30年間ずっと大好きなムーンライダーズの鈴木さんからのTシャツデザイン依頼。インターネットを介して、こんなに素敵なことが実現しました。このエピソードは伺いながら、ちょっと涙ぐんでしまいした。最高のエピソードです。

そして「マニアパレルのやっていることは面白いと思うから、協力するの全然大丈夫ですよ。本業で稼ぐんで」でおっしゃってくれる皆様も素敵です。これもマニアパレルさんがマニアのイタコとして、熱量を全て受け止めてデザインをされているからと思います。

ということで、こちらは「マニアパレル(後編)」に続きますので、是非続けてご覧下さいませ。

まだ「マニアパレル(前編)」をご覧になってない方は、併せてご覧下さい。

今回ご協力いただいた「マニアパレル」の公式サイトはコチラ。

 マニアパレル
 http://blog.livedoor.jp/r2koba/

このインタビューを読んだ後にTシャツを見てみると、新しい発見があるかもしれませんよ。

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