第96回目「Tシャツブランドインタビュー」~ No More Tears 編(前編)

第96回目のTシャツブランドインタビューは「No More Tears 編」です。

No More Tearsのサイトはこちらです

 No More Tears
 http://www.nmt-tokyo.jp/


今回のインタビューは、 No More Tears です。

Tシャツ好きであれば、みんな知ってるインディーズTシャツ専門店。下北沢からスタートしたお店が、いまや3店舗となりました。

今回のインタビューでは、代表のみやじまのりさん、奥様の禎子さん、社員のかわしたさんのお三方にお話を伺いました。

ボリュームあるインタビューのため「前後編」の2本となります。どういうお話が伺えるのか?お楽しみに。

第96回目「Tシャツブランドインタビュー」~ No More Tears 編(前編) (2010/10/29収録)


――7年目の No More Tears

クラゲ : 今日はよろしくお願いします。前回のインタビューは 2006 年に「IAN BAKAN & No More Tears」としてでしたね。

NMTみやじまのり : え、そんなに前なんだ。前回のインタビューのときは No More Tears 3年目で、今はお店7年目になるんですけど、7年あっという間でしたね。忙しかった。特に最初の3年間はホント大変でした。夫婦喧嘩もめちゃくちゃしましたもん。前例がない店だったので、この7年間、常に新しいことを決めていってました。

酒人 -バタンキュ-
酒人 -バタンキュ-

クラゲ : 今は何人でやってらっしゃるんですか?

NMTみやじまのり : 2010年10月1日付けで法人にしまして、社員が5人とアルバイトが4人になりました。そして店舗もお陰様で、「下北沢店」と「ららぽーと横浜店」「川崎ラ チッタデッラ店」の3店舗になりました!



――No More Tears の面白いシステム

NMTみやじまのり : No More Tears には面白いシステムがあって、アルバイトでも社員でも自分でTシャツをデザインして、それをお店で売る。Tシャツが売れると他のブランドさんと同じように代金を支払うので、バイト代以外にちゃんと稼げるようになっているんですよ。

で、入ってすぐにTシャツ作れる人はアルバイトが長続きする傾向にあるんですよ。一方でなかなか作るに至らない人もいるんです。そういう人は長続きしないことが多いんですよね。自分の作品を発表するって勇気が必要ですからねぇ…。

でも実際に自分の商品が売れた時の喜びはひとしおなんですよね。その感激は出来るだけ多くの人に知って欲しいですね。

モテた。
モテた。

クラゲ : 確かに自分で作ったものを自分で接客して、それが売れたら楽しいですよね。

NMTみやじまのり : そうなんですよ。でもお客さんは正直だから、自分のデザインしたTシャツだけを精一杯売り込んでも、お客さん自身が欲しくないTシャツは買ってくれないんですよ。オモシロ系のTシャツ一つとっても、店全体のレベルが高いから、ライバルがたくさんありますよ。

クラゲ : ほかのブランドさんがたくさん売れるのを見てると、どうして自分のTシャツは売れないんだろうって思いますよね?

NMTみやじまのり : そこで客観性を持って分析出来る人は強いですよね。ちなみに、うちで最近はやってるのは「コビタ系」なんですよ。

クラゲ : コビタ系???

NMTみやじまのり : ヒット作のフォロワーですね(笑)。お客様に「媚びる」ところから「コビタ系」なんです。例えば、猫のTシャツが売れ始めたら、猫のTシャツを作る人が増えるんですよ。まあ、あくまで、こっそりと…ですけどね(笑)

今は、かわいい、いわゆる「ゆるかわ」は売れますね。そういう風にその時々の売れ筋の傾向も客観的に見ながらやっていくと面白いですね。

クラゲ : 作り手と売り手が一緒の No More Tears ならではですね。



――「このパクリは売れるよなあ(笑)」

NMTみやじまのり : 「商品が面白い」とお客さんは、かなり素直に反応してくれるんですよ。

ユニクロとうちを比べると、ユニクロの値段を見た後に、Tシャツ1枚が 3,000円っていうのは、高いなぁって印象をつい持ってしまうじゃないですか。でも、Tシャツが面白いと買ってくれる。面白いって「笑えるギャグT」だけじゃなくて「人とちょっと違う」ってことなんですけどね。

他と差別化が出来ている面白い商品だと、ちゃんと反応してもらえるっていうのは、色んな意味で勉強になり、自信にもなりましたね。

自信に繋がったという意味では、開店2年目から、パルコとか丸井とか三越の百貨店でイベントをやってきたんですよ。

これも同時に勉強になりましたね。イベントを開催すると先方がびっくりするんですよ。「Tシャツだけでこんなに売れるんですね」って。
No More Tears で扱っているTシャツって、当時は特に、いわゆるショッピングセンターじゃありえないジャンルですし、イベント開始当時は本当に全くの無名店でしたからね。今思うと、よく販売させてくれたと思います。

ブルータス
ブルータス

あと、ここ数年、大手の会社にデザインをパクられることも出てきました(笑)。コンセプトもデザインも「あ…」と一瞬言葉を失うほどパクられてるんですけど、冷静になってよぉ~く見てみると、パクッた方が明らかに売れるのが分かるんですよ(笑)。こちらのものを基本にして、やけにカッコいいデザインになってたり、普遍的なかわいさを放っていたり、洗練されてたりして、確かにこの(パクリ)ほうが売れるよなぁって感心したりして(笑)。スタッフにも見に行かせて「な、あっちのほうが売れそうだろ?」って(笑)



――「Tシャツを売る場を作りたい」が原点

クラゲ : 最近はお店に持ち込みのブランドさんって増えてらっしゃいますか?

NMTみやじまのり : ありますねぇ。こっちから声を掛けると「待ってました」って身を乗り出してくれるブランドさんも増えていまして感謝ですよ。「ようやくお声いただけましたか!」って泣きそうなくらい喜んでくださる方もいらして。やはり皆さん、販売場所を確保するという意味では未だに大変なんだろうなぁと思います。自分が自分のブランドのTシャツを売るに当たって「売る場所がない!何とか作りたい!」と思ったのがそもそも No More Tears の始まりですからねぇ。

あと、ブランドさんにお声をかけるのは、イベントで会って感銘を受けてその場でだったり、知り合いからの紹介だったりというパターンが最近は多いですね。お声をおかけすると、意外なほど喜んで下さったり、No More Tears での販売を一つのステータスに感じてくれているところもあったりして、そういう現象が生まれ始めているのは、自分たちの励みにもなりますね。

宇宙を理解した。
宇宙を理解した。

また、今年は「Tシャツを作る」っていうイベントを下北沢でやりまして、そこに参加してくれた男性の作品が面白かったので声をかけたら、やはりすごく喜んでくれて、「実は以前 No More Tears に初めて遊びに行って、ものすごいインパクト受けたのがきっかけで、ブランドを立ち上げてTシャツを作り始めたんですよ。だから声をかけてもらうのが夢でした!」って言ってくれたんです。感動しましたよ、本当に。頑張ってきて良かったなぁって…。

でも僕はわりとポーカーフェイスなんで「ほぉ、そうですか…」なんて普通に応えてしまったかも知れません。本当はものすごく感動していたんですけど…。あまりに驚いたのかも知れません。そんなことがあるんだ、と。いずれにしても感動は伝わりきれなかったかも。反省しています(笑)

クラゲ : ブランドさんからの営業をお断りするケースはあったりしますか?

NMTみやじまのり : それもあります。店だとどうしてもスペースが限られてるので。タイミングも重要なんですけど、物理的にどうしても置けないということも多々あります。

あと、もしお取引を開始しても売れなかったら、逆に申し訳ないなっていうのもありますからね。その商品の善し悪しではなく、店に合うか合わないかというのが大きいです。ブランドさん達の大切な商品をお預かりするのには責任が生まれますからね。お預かりするからにはちゃんと売らなきゃいけない。でもどうしてもウチには合わないと思える場合は、商品のクオリティーには関係なくやはり…。



――「Tシャツ・ラブ・サミット」で人生が変わった

NMTみやじまのり : ラブサミ(Tシャツ・ラブ・サミット)は毎回チェックしてるんですけど、僕が「IAN-BAKAN」という個人ブランドで参加していた最初の頃って、売り手にも買い手にも何が起こるかわからないっていうワクワク感があったんですけど、今はある部分が安定してしまったような感じってないですか?

クラゲ : ラブサミの最初は、参加ブランドさんも少なかったので、運営者もブランドもみんな手探りでやってる所がありましたね。

NMTみやじまのり : ラブサミの1回目は特に、どのブランドさんも「本当に売れるのかな」って思いながら超試行錯誤でやっていたと思うんですが、いざやってみると予想以上に売れて売れてびっくりしたんですよね。

僕もそれまではネットでちょろちょろっとしか売れていなかった IAN-BAKAN の商品が、それこそ嘘のように売れて。これマジな話なんですけど、あれで人生が変わったんですよね。夢を見始めてしまったというか…(笑)。それくらいすごく売れたんですよ。

ゴーヤの時代
ゴーヤの時代

当時は、普段何をやってメシを食っているのか分からない、アウトロー的なブランドが集まってる感じが面白かった。常識なんかそこには存在しないって感じでしたよね。自分たちもまさにそんな連中でしたけど(笑)。このラブサミの1回目に参加してなったら No More Tears っていうお店はやっていませんでした、間違いなく。2日間Tシャツを売ってる間、お客さんこんなに喜んでくれているじゃん、なのになんでお店では取り扱ってくれないの?ってずっと思ってました。

クラゲ : ラブサミ1回目は、そもそもTシャツだけのイベントでお客さんが来るのか、って思っていたところに、開場前に会場の渋谷アミーホール前にすごい行列が出来て、ブランドさんがみんな「こりゃすげー」って思いましたよね。

NMTみやじまのり : あの行列はすごかったですね。当時のこと全部覚えてますもん。途中で商品が足りなくなって、タクシー乗って世田谷の自宅に取りに帰って、家に山のようにあったTシャツの在庫をダンボール2箱に急いで詰めて、またタクシーで戻ったんですが、それもまた全部売れちゃって…。すごい売れたんですよね。あの日、万札を何ミリ分かの厚みで持って帰れたもんね(笑)

そして、ラブサミ2回目の出店でも同じように売れたんですよね。面白かったです。ラブサミにも本当に感謝しています(笑)



――どうして今まで No More Tears のようなお店がなかったか?

クラゲ : 今までお店を続けてきて、大変だったことを教えてください。

NMTみやじまのり : 「商品管理」でしょうね。裏側の話なのでちょっと生々しいんですけど、お取引しているブランドが30、40を超えてくると、月末の売り上げ代金の振り込みも大変なんですよ。だから普通の店はこういうやり方をやらないんだなって気づきました(笑)

各ブランドから出ているアイテム数も多いし、各アイテムでサイズもそれぞれあるじゃないですか。それで、オープン当初はやることなすこと初めてのことばかりだったので、値付け一つとってもちゃんと考えないといけなかったので大変でしたね。今はさすがに慣れましたけど。

クラゲ : 確かに今まで前例のないショップでしたもんね。

NMTみやじまのり : ららぽーと横浜に出店してからも学ぶことばかりですね。大きなショッピングモールでお店を開くってこういうことなんだ、って。今でも日々学ぶことが沢山あります。だから面白いという部分もあります。

ららぽーと横浜って、周りは大企業が運営しているお店がほとんどなので、やはり内装のお金のかけ方が違うんですよ。僕らはあまり内装にお金をかけられなかったから、逆にチープ感をいい方向に見せようと。まぁそんなことも含め、とにかく参考に出来る前例がないことだらけの中での出店でしたので、創意工夫はすごいですよ。常にラブサミ第1回目ですよ(笑)

あと、ららぽーと横浜では、月に1回全店店長が集まっての店長会議っていうのがあるんですけど、そこでユニクロとかいろんなショップの出席をとっていくんです。ウチは出店の最初の頃はまだ法人化していなくて、個人事業でやっていたんですよ。会議の出席を取る時に、他は皆、「株式会社○○さん、○○株式会社さん」って呼ばれていくんですけど、ウチだけ「みやじまのりゆきさん」って個人名で呼ばれて…。

これ、ものすごい緊張感。客観的には爆笑ですよね。個人事業で出店するってのが、ららぽーとでも前例がなかったらしくて、特例中の特例だそうで、苦肉の策として個人名で呼ぶことになったようで。おかしいなぁ…。

クラゲ : 間違って迷い込んじゃったみたいな、なんとも不思議な空間ですね(笑)

NMTみやじまのり : 契約書も特別に「個人用」を作ってもらいました(笑)

ららぽーともそうですけど、ショッピングセンターって覆面調査員がいて、その人がお客さんのふりをして来店して、接客態度とかの調査を行うんですよ。その調査でウチはなんと! 100 点満点だったんですよ。普通は 100 点ってありえない点数らしいですよ。平均が 50 点くらいで、悪いところは 20 点台だったり。だからこれは素晴らしいことだって、たくさん褒められました(笑)。でも気は抜かないようにって。

さびしんぼ
さびしんぼ

どうして No More Tears を法人化せずに個人事業でやってきたのかっていうのには理由があって、個人事業という形でどこまで常識を塗り替えられるかってのをやってみたかったんですよ。「個人事業だから経験できること」と「会社にしちゃうと経験できないこと」の両方あると思ってて。個人事業だと何となく軽く見られることも多々あるわけじゃないですか。だからすごく勉強になったのは事実ですね。でももういいかなぁって突然思ったので、今はすっかり法人化しました。何となくですが、人間が丸くなった感じがしてます(笑)。

まぁ今ももちろん毎日色々大変なことがありますけど、基本は楽しいですよ。夢もあるし。大変なことを苦労とは感じてないんですよ。無理矢理感じないようにしているのかも知れませんけどね(笑)。しかしまぁ見方次第っていうのは確かにあって、呑みの場のネタになるからいいか、って(笑)。カッコイイこと言うわけじゃないですけどね。あと、こういうことを言っているのを活字で見ると、妙にスケール感のある人に思えたりしますよね。そう思わせることを目指してるんだな、きっと僕は(笑)。



――東京Tシャツ部がきっかけで No More Tears 入社

クラゲ : 河下さんって No More Tears に入って何年目だったっけ?
大学4年生のときにバイトで入ってからだよね?

NMTかわした : :22才から入って7年目ですね。

クラゲ : 元々 No More Tears でバイトしようと思ったのはどうしてなの?

NMTかわした : :東京Tシャツ部を見ていて、そこで「Tシャツビジネス塾」の存在を知って、そこに参加したのがきっかけですね。そこで講師をされていた Anyhitng の西村さんとみやじまさんと知り合って。そこに塾生向けのお知らせでアルバイト募集ってのがあって、そこに応募したんですよ。その時どうして応募したか、全然覚えてないんですけどね…。そこからずっと No More Tears にいますね。

クラゲ : 就職活動のときに普通の会社に就職しようってのは無かった?

NMTかわした : :当時、Tシャツに関する仕事をしたいなあ、と漠然と思っていたんですよ。純粋でピュアにTシャツが好きだったんですよ。で、No More Tears を盛り上げたいなあと思って、入ったんですよ。


――No More Tears の「本当の商品」とは?

NMTみやじまのり : ウチは他店が真似できないことをやり続けたいと思っているんですよ。デザインだって普通は、流行に対して右にならえっていうのが多いですが、そんなの気にしないで、未知の可能性が広がってく「アイデア」でやっていきたいですね。真似したくても、例え真似してみても、真似しきれないところを目指したいですね。

僕らの商品の長所をあげるとすると「自分たちの視点」ですね。普遍的・常識的な形では判断しないんです。僕も妻も元々音楽業界にいたこともあって、No More Tears の存在は「テレビ局みたいな感じ」と思ってるんですよ。テレビ局って色々なジャンルの番組があって、色々な人が番組に出てるじゃないですか。僕らは No More Tears っていうテレビ局で、Tシャツという存在は、歌手やお笑い芸人、役者さんみたいなもの。それぞれのカラーとパワーで盛り上がっていきたいんですよ。



前編のインタビューはこれで終わりです。

インタビューはこちらの「No More Tears 編(後編)」に続きます。

ということで、今回ご協力いただいた「No More Tears」のサイトはコチラ。

 No More Tears
 http://www.nmt-tokyo.jp/

このインタビューを読んだ後にTシャツを見てみると、新しい発見があるかもしれませんよ。

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