第71回目「Tシャツブランドインタビュー」~エムズアプライド編

第71回目のTシャツブランドインタビューは「エムズアプライド編」です。

エムズアプライドのサイトはこちらです

 エムズアプライド
 http://mzuapplied.com/


今回のインタビューは エムズアプライド さんです。

お話をお伺いするエムズアプライドさんは「Tシャツプリント屋さん」なので、今回のインタビューは特別編となります。

Tシャツインタビュー初めてのプリント屋さんへのインタビュー。どのようなお話が伺えますでしょうか。お楽しみに。

第71回目「Tシャツブランドインタビュー」~エムズアプライド編 (2010/8/16収録)

エムズアプライド

【住所】 124 – 0005 東京都葛飾区宝町2-4-15 1F (地図はこちら
【店舗受付】 月~金 12:00~18:00
【定休日】 土・日・祝日
【問い合わせTEL/FAX】 03-3697-0811 (17時以降はメールまたはFAXにて承ります)
【URL】 http://mzuapplied.com/

クラゲ : 今日はよろしくお願いします

三雲 : よろしくお願いします。

クラゲ : 今回は初の試みとなる、Tシャツプリント屋さんインタビューとなりますが、よろしくお願いします。まず最初に「エムズアプライド」という名前の由来を教えてください。

三雲 : はい。まず「エムズ」は、本名の「三雲水樹(みくもみずき)」から単純にとりました。昔からプリント屋に係わらず、もし独立開業するときには必ず「エムズ」は屋号に入れようと思っていて、その「エムズ」に続けて何かを付けようかと。でも「エムズプリント」とか「エムズファクトリー」辺りは多分既にに在りそうな名前だし…ちょっと普通過ぎで…。

で、デザイン用語の辞典を見ていたんですね。辞典だから「あ行」から順に見ていきまして、早速「アプライド」という単語を見つけて、その場で「エムズアプライド」って即決です!もう他の行は見ませんでした(笑)

クラゲ : 「アプライド」って単語を見つけたときに、これだ!って思ったんですか?

三雲 : そうですね。2つの単語を続けたときの「エムズ」「アプライド」の語感がよかったのでこれで決まりでしたね。ちなみに、「エムズ」はアルファベットで書くと「M’ZU」なんですが、これは自分が青春時代をすごした「MZA有明(エムザアリアケ)」の雰囲気が好きだったんで、それにならいました。

クラゲ : 今のディファ有明の前身ですよね。あと「アプライド」とはどういう意味なのですか?

三雲 : 「アプライドアート」というデザイン用語からきています。色々な意味があるんですが、壁に落書きするような自由に描くフリーアートではなく、目的がある芸術のこと「目的芸術」のことを言うんです。Tシャツにプリントするって、「着る」っていう目的がありますよね?だから日常のもののデザインのほとんどは、アプライドアートって言うんですよ。



クラゲ : エムズアプライドを開業して何年目ですか?

三雲 : 今年(2010年)で満14年ですね。プリント業でいうと、17歳後半のときからなんで25年になります。

クラゲ : 17歳のときにプリント業をはじめようと思ったきっかけは?

三雲 : 当時、夜間学校へ行きながらバイクで文房具を配達する仕事をしていたんですね。片やその頃、無職のサーファーの友人が入り浸っていた地元のサーフショップの社長に「お前プラプラしてんだったら知り合いのプリント屋を紹介してやる」って言われたらしく、そのまま東上野のプリント屋で働きだしたんです。

ちなみにサーフボードの中に浮いている絵柄もシルクスクリーンなんですよ。和紙にプリントしたものをボード製作途中で入れて、和紙の部分だけが溶けると言う…。あ、話が逸れましたね(笑)

クラゲ : サーフボードってそうやって作ってるんですね。はじめて知りました。

三雲 : 最初は無地のジャンバーを友人に渡して「なんかいい感じのロゴ入れといて」ってお願いしてシルクスクリーンで刷ってもらってたんですね。そうこうしているうちに、友人から「近くまで通るなら遊びに来れば」と言われて寄ったんです。バイク配達圏内の場所だったし。

そこでプリントの現場を初めて見たんです。「あー、こうやって俺のジャンバーもプリントしてたのか」って思って。でも、そのときはどうやってプリントしてるのか、よく分からなかったんですね。

クラゲ : ほほー。

ミッキー&ジョー

三雲 : その工場で仕事していたのが、ほとんど全員友人で当時17歳の子供だったんで適当にやっている感じがうらやましかったんですよ。誰から怒られることも無く、みんな仲間同士で仕事しあって、友達が来たら仕事の手を止めてジュース飲みに行っちゃうような。それを見て、なんかコイツら自由だなあと思いながらも、ここで働きたいなってのは別にありませんでした。

その後、事情があって配達の仕事を辞めることになり、どうしようかなあと思っていたら「あ、あのプリント工場がある」って急に思い出して、勤めていた友人経由で社長に紹介をしてもらうことにしたんです。友人は「今、丁度仕事があんまり無いから働けるとしても少額ギャラかもしれないよ」って言っていたけど、あーそれでもイイよって。

クラゲ : ちょっとしたきっかけだったんですね。

三雲 : 当時(25年ほど前)仕事をしていないプー太郎の状態ってすごく恥ずかしいことだったんですね。現在でもそれはあるんでしょうけど、「親(実家)に金を入れる、後輩には全部おごる」は当たり前だったし、2~3日でも無職になるとかっこ悪い…。そんな時代でした。

クラゲ : 「プー太郎」って、今で言うところの「ニート」みたいなもんですかね?

三雲 : うーん。今のニートって周りから変に認知されているじゃないですか?あいつはニートだから、みたいな。でもプー太郎って人間じゃないってくらいに思われてましたからね。だからどうしても仕事したくてしたくて。でもまさか日当4,000円のバイトからスタートだったとは!25年前とはいえ流石に安かったです。今でこそ4,000円稼ぐとしたら、あっという間ですけどね(笑)



クラゲ : 初めて刷ってみたときはどうでしたか?

三雲 : 勤める前にそこのプリント工場には何回か遊びに行っていたんで、どうやったらプリントが出来るかっていう手順は見てなんとなく知っていたんですね。

初日はインクで汚れた容器を真冬の冷たい水道水で洗うところからはじめて、刷りは行えずに2日くらい過ぎました。そこからあるとき社長に「お前ちょっとこれ半日かけてもいいから刷ってみろ」って裁断地の水着へのワンポイントを入れる仕事をもらったんです。結構な枚数の束だったんですが、15分くらいで完成しちゃって社長に「できました」って言ったら「お前早いなあー」ってビックリされて、この瞬間「もしかしてプリントは天職かな」って思いましたね。

あと、ちょうどその頃、先に働いていた友人らは自動車教習所に通い出していた時期なんで、次から次に色々なプリントを任されるようになりましたね。だから師匠がいないんですよ。誰かに手取り足取り教えてもらって仕事を覚えたんじゃないんで、目で見て盗んで覚えて刷りましたね。

グラデーションのプリントも社長から突然「お前ちょっとこれやってくれ」って言われて。「いやいや俺、誰からも教わってないから」って言ったんですが、いざ刷ったら、そのまま納品できるクオリティのプリントが出来ちゃって。その頃には給料もグンッと上がりました。



クラゲ : その当時って忙しかったんですか?

三雲 : いやー、もろバブルだし半端なかったでしたね。数千枚ってプリントが入ってきたら、みんな交代で徹夜して刷ったりして。初めて万単位を経験したのは今でも鮮明に憶えています。某有名デパートの『スパークリングセール』スタッフTシャツです。小さな工場とはいえ、1階、2階、そして階段まで段ボールで埋まりましたから。

とにかく社長の顔が無茶苦茶広かったんで『トコロズファクトリー』っていう所ジョージさんのプリントもしてましたね。芸能人のゴルフコンペ関係のプリントもしていたなあ。タ○リ倶楽部Tシャツも実はそこで刷っていたんですよ。それだけ忙しくても当時はまだ子供だったんで、面倒だなあって思った日は勝手にシャッター閉めて帰っちゃったりして(笑)

クラゲ : そこでは何年くらいお仕事されてました?

三雲 : 4年くらいです。どうしてやめたかというと、あるときに自分がちょっと絵を描けることを社長が気づいちゃったんですね。

自分の夢がプロダクトデザイナーだったんですよ。例えばオモチャを作ったり、企業のロゴマーク作ったり。夜間学校を卒業後、当時は繋ぎの気持ちでプリント工場で仕事をしながらデザイナーになるべくデザイン学校にも通いはじめていたんです。

プリントをするには「製版」があって、「版下」がありますよね。今で言うデータ。でも昔はパソコンなど当然無く、手描きで版下を作っていたんですね。その版下を作る仕事の殆どが自然と自分が担当になっちゃったんです。朝から晩までお客様から頂いたラフデザインをきれいに描いて。当時は FAX もろくに無かったんで、描いたもののコピーを郵送でお客様にお送りして、OKが出たらそれを版にする。ここまでが製版です。

それはそれで良かったんですが、1日中机に向かって仕事するスタンスが自分の中で考えられなかったんですよ。プリント屋で入ったのに、これがイヤだなあって思って…。だから社長にはローテーション組んでくれ、アシスタントを入れてくれって散々お願いしてたんだけど、社長は分かった分かったと口だけで何もしてくれなく。で、若かったからブチ切れて「もうやってられない」って辞めたんです。まぁ、正当化してますけど要はやっぱり子供だったんですね(笑)

クラゲ : そこから自分の「エムズアプライド」を立ち上げるきっかけは?

三雲 : そのプリント工場を辞めた後、なんとかデザイン事務所に入ったんだけど自分の想像と全然違ってましたね。当時、デザイナーの花形は新聞のレイアウトを作る事だったらしく、全然グラフィックデザインが出来なかったんですよ。で、そこもすぐに辞めて、プー太郎がいやだったんで繋ぎにシルクスクリーンの工場に入って…。あー、結局これに戻ってくるんだなあ、と。

でも、どの工場に入ってもすぐに主任にさせられて重かったです。

クラゲ : それは仕事が出来ちゃうかからですよね



三雲 : そのあと衣類以外の印刷会社にも入ったこともあります。そこではアクリル板や鉄板、電飾看板や大手デパートの POP 関係、博物館のキャプションやガラスなど、それこそ水面以外は何にでも刷りました。設備上、衣類は不得意な会社でしたけど、布だけでいうと横断幕とかは刷ってましたね。

こういうところって現場に版を持って行って壁に押し付けて刷るんですよ。だから一時期、日本全国の博物館や資料館へ飛び周ってましたね。単身、兵庫県の資料館をやっつけてそのまま島根県の資料館へ行ったり!現在でも自分が刷ったものが残ってるでしょうね。4~5年やって、製作課長まで昇ったんですけど、会社が暇になると突然営業やってこいって言われるようになって…。

実際、大きい仕事を取ってくる事もありましたけど、「何か違う」と思って辞めました。そういうのが何回かあったんで、自分で独立開業することに至りました。もう、言ったら“妥協案”です(笑)

そう考えたときに、一番最初のプリント屋時代の同期が先に独立開業していたんで、そこでバイトさせてもらいながら機械の買い方や資材諸々の話を聞きました。

クラゲ : はじめての独立の時、不安はありませんでしたか?

三雲 : プリント自体は不安どころか自信あったんですが、資金繰りは流石に不安でしたね。先に独立した友人のところにバイトに行ってたときに彼が言うには「簡単だよ。1色100円のプリントだとしたら、1,000枚やれば10万円。それを10日やれば100万だよ。残りの20日間は遊べるよね」と。でも今考えたら、それに騙されたな!何その単純計算(笑)そんなロッドの仕事が毎日ある訳ないのに!



クラゲ : プリントの仕事をやっててよかったなあと思う瞬間は?

三雲 : 今でもそうなんですけど、納品した後に来るお礼のメールが最高の糧になります。「お陰で間に合いました」とか「こんなに細い線でも表現してくれてうれしいです」とか。今年で満14年なんですが、ホームページで注文を受けるようになってからのお礼メールは全て保管している宝物です。

クラゲ : 他と比べて三雲さんのところのプリントの売りは?

三雲 : 皆さん「早い早い」って言ってくれてありがたいんですが、個人的にもっと見て欲しいのが、プリントの「キレイさ」「シャープさ」ですね。決して他社さま批判という訳ではないんですが、Tシャツイベント等に行くとついついプリントの仕上がり具合の方を見ては「あ、うちの勝ち」とか心で言ってます(笑)。一度、エムズアプライドをご利用頂いたお客様のリピート率が高いところはその辺りの賜物だと勝手に思っています。

クラゲ : 「キレイ」な上に「早い」んですね。

三雲 : それを常に心がけています。まず納期の早さでは絶対に負けません。その上でもちろん線をキレイに出すことも絶対です。シルクスクリーンプリントの原理って簡単で、モノがあって、版があって、インクをのせて、スキージでこすれば、誰でもできます。ただ、そこでインクの種類、硬さ・軟らかさ、力を入れるときの強弱、スキージの硬さ・軟らかさ、角度がポイントになってくるんですよ。ここは色々なものを刷ってきた豊富な経験に任せていただきたいです。

クラゲ : 最後に東京Tシャツ部を見ている方に一言お願いします。

三雲 : そうですね。「もうちょっとこの辺の表現を上げたい」、「納期がいい加減遅すぎる」等のお悩みをお持ちのTシャツブランドさんがいれば、是非お試しに一度、エムズアプライドに預けてみてください。

クラゲ : 今日はありがとうございました。

三雲 : ありがとうございました。



インタビューはこれで終わりです。

今回はじめてのTシャツプリント屋さんへのインタビューで上手に出来るか不安があったのですが、三雲さんのご協力で色々と楽しいお話が聞け、楽しいインタビューでした。

実は東京Tシャツ部部員向けTシャツなど、何回か三雲さんにお願いをしたことがあり、毎回満足のいく仕上がりを頂いてまして、仕上がりのクオリティの高さは確かです。

ちなみに、インタビュー中のイラストのネコちゃんは、ジョーちゃんで、エムズアプライドブログにもちょこちょこ出演する可愛いネコちゃんですよ。

ということで、今回ご協力いただいた「エムズアプライド」のサイトはコチラ。

 エムズアプライド
 http://mzuapplied.com/

このインタビューを読んだ後にTシャツを見てみると、新しい発見があるかもしれませんよ。

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